電気的性質

Ⅰ. 絶縁破壊強さ

ナイロン6の絶縁破壊強さの試験厚さ依存性を図3.28に、吸水率依存性を図3.29に示します。

  • 図28.  ナイロン6の絶縁破壊電圧の試料厚さ依存性図28. ナイロン6の絶縁破壊電圧
    の試料厚さ依存性
  • 図29. ナイロン6の絶縁破壊電圧の吸水率依存性(絶乾時、25°C)図29. ナイロン6の絶縁破壊電圧
    の吸水率依存性(絶乾時、25°C)

Ⅱ. 誘電的性質

絶乾状態では周波数50kHz~20MHzの間では誘電率εは

ε=a log f+b(f:周波数 Hz)

の関係が成立します。ここで、a、bはナイロンのタイプによって決まる定数であり、表2に示す通りです。

表2. 誘電率の定数a,bの値
ナイロンのタイプ a b
CM1017(非強化ナイロン6) -0.15 4.25
CM2001(非強化ナイロン610) -0.10 3.75
CM3001-N(非強化ナイロン66) -0.20 3.80

吸水によって誘電率、誘電正接は変化しますが、その影響は低周波数ほど大きくなります。CM1017(ナイロン6)の20°C水中での誘電率の経時変化を図30に、誘電正接変化を図31に示します。

  • 図30. CM1017(ナイロン6)の20°C水中における誘電率の経時変化 図30. CM1017(ナイロン6)の20°C水中における誘電率の経時変化
  • 図31. CM1017(ナイロン6)の20°C水中における誘電正接の経時変化 図31. CM1017(ナイロン6)の20°C水中における誘電正接の経時変化
図32. CM3001-N(ナイロン66)の温度による誘電正接の変化(絶乾時)

図32. CM3001-N(ナイロン66)の温度による誘電正接の変化(絶乾時)

CM3001-N(ナイロン66)の誘電正接の温度依存性を図32に示します。
絶乾状態では各種ナイロンとも著しい差はありませんが、吸水により性質が変化しますので、ナイロンを電気部品として使用する場合、吸水率の小さいCM3001-N(ナイロン66)の方がCM1017(ナイロン6)に比べ有利です。しかし、10MHz以上の高周波領域では水分の影響は極めて小さく、ナイロン種の違いによる差も極めて小さくなります。

図33. CM1017、CM3001-Nの吸水率による体積固有抵抗の変化

図33. CM1017、CM3001-Nの吸水率による体積固有抵抗の変化

Ⅲ. 体積固有抵抗

CM1017(ナイロン6)、CM3001-N(ナイロン66)の体積固有抵抗の吸水率依存性を図3.31に示します。吸水率が1%増加すると体積固有抵抗は約1桁小さくなります。