ゲート設計

ゲート設計は金型設計以前の、製品設計の段階ですでに検討しておくべきことがらです。

ゲートなどの関係位置

スブルー(sprue) ランナー(runner) ゲート(gate) キャビティ(cavity) コールドスラグウェル(coldslugwell)の関係位置は図4.1のとおりです。

図4.1. ゲートなどの関係位置

図4.1. ゲートなどの関係位置

ランナー

断面形状は円、半円、台形があり、円形が最も流動抵抗が小さく一般的です。円ランナーについては表4.1に直径と長さ及び製品の肉厚の関係を示します。

表4.1.ランナの寸法,長さ
ランナー径
(mmφ)
キャビティに最も近いスブルーブッシュ
からの最大ランナーの長さ(mm)
製品の肉厚
(mm)
3~4.5 150 4.5

6~7.5

300 6
9 370 6
図4.2. 半円及び台形ランナーの形状

図4.2. 半円及び台形ランナーの形状

半円及び台形ランナーについては図4.2に深さhと、幅W、B、半径rの関係を示します。

ゲートの種類

一般的に使用されている10種類のゲートを表4.2に示します。ナイロン用には赤字で書かれたゲートが適します。
ゲート断面形状の種類については図4.3に示します。

図4.3.ゲート断面形状の種類

図4.3.ゲート断面形状の種類

表4.2.ランナの寸法,長さ
ゲートの図解 ゲートの種類 特長
ゲートの図解 直接ゲート 成形品の側面、または周縁に直接設けたもの。
ゲートの機械加工は正確にでき、キャビティ充てん率がゲート・シール時間と相対的に独立しセコニントロール可能
ゲートの図解 ファンゲート 大型の平板状の成形品に適する。
ゲート付近の欠陥をなくし、歪を最小におさえられる。
材料のキャビティ充てん速度を早くできる。
ゲートの図解 トレート・トップゲート 成形品の先端または面に設ける。側面が重要な成形品に敵する。ジュッテング現象が解決できる。
仕上げがめんどうである。
ゲートの図解 ファン・トップ ゲート 大型で側面が重要な成形品に敵する。
ゲートの図解 リング・ゲート 成形品の外周に設ける。材料は外周から中心に向って流れる。
ウェルド・ラインや仕上げに難点あり。
ゲートの図解 センター・ダイヤフラム・ゲート 材料は中心から外周に向かって流れる。同心性を有する成形品に敵する。
仕上げに難点あり。
ゲートの図解 カラー・ゲート 円筒状の成形品に適する。
型構造上、三面割にしなければな らない。
ウエルド・ラインが生じない。
仕上げが困難。
ゲートの図解 サブマリン・ゲート 雛形時にランナと成形分が分離し仕上げ作業が不要。
微結晶性ナイロンなら成形可能。
ゲート位置と注入角度の充分な検討の要あり。
ゲートの図解 ピン・ポイント・ゲート 仕上げ作業不要。
型構造上、三面割にしなければならない。
微結晶性ナイロンなら成形容易。
ゲートの図解 タブ・ゲート ランナーとタブ間の第一ゲートは溶融材料の流動を止めるバルブの役目をなし、第ニゲートはキヤビティへの均一な充てんをなし、ゲート付近の残留応力を成形品中にあまり残さない。
仕上げがめんどう。

ゲート位置の選定

Ⅰ. 製品性能から

  • デザイン:外観上ゲート跡、仕上げ跡が残ってもよい位置。
  • 寸法精度:歯車、軸受などのように真円性が重要なものは中心から注入する。寸法精度が厳しく要求される箇所にはゲートをつけない。
  • 強 度:ウェルド・ライン発生位置を推定し、その強度はどうか。問題ありと判断される場合はゲート位置を変更する。

Ⅱ. 金型の取数から

取数は1個取りか多数個取りか。
ランナ、キャビティ配置、ポリマーの射出庄による金型の型開き圧力のバランスがよいか。型開き圧力が集中するとばりが発生したり、金型が歪曲する。

Ⅲ. 仕上げの経済性から

三面割り金型によるピンポイントゲートを採用するか、仕上げ不要のサブマリンゲートにするか。普通のゲートにするか。

Ⅳ. 材料の成形性から

材料の流動性、耐熱変色性、成形歪などからゲートの種類の選定とゲートの位置をきめます。

ゲートバランス

溶融ポリマーはすべてのゲートに同時に到達し、キャビティを同時に充満するように設計しなければなりません。 ゲート・バランスが悪い場合、フローマーク、ひけなどの外観上の問題、強度の差が各成形品に起ります。

Ⅰ. キャビティ配置をバランスよくとる。

図4.4~図4.5に示すようにランナを均一に走らせ、全ゲートに同時に到達させます。しかしランナは比較 的長くなるのが欠点です。

  • 図4.4. ゲートバランス

    図4.4. ゲートバランス

  • 図4.5. ゲートバランス

    図4.5. ゲートバランス

Ⅱ. ゲート断面積を変える

ランナーの一般的なとり方の場合、各ゲートの断面積を変えて、均一な充てんを行なわせてゲートバランスをとります。
すなわち各ゲートの断面積は次式で算出されます。


ただしW : (g)通過するポリマーの重量
SG : (mm2)ゲート断面積
: (mm)ゲートまでのランナーの長さ
: (mm)ゲートランドの長さ
K:ポリマーの性質、金型などによりきまる定数

問題例
下図に示すようなランナーがある。各ゲートの断面積SG1、SG2、SG3、SG4、SG5を算出する。
問題例

<解>
スブルーにすぐ接したゲートSG3の断面積はランナー(直径4.5mmの円形)のその1%とすればSG3=0.01×π×4.52/4=0.159mm2、ゲート断面形状が長方形でゲート幅W,ゲート深さhとの関係がW=3hとすればSG3=W×h=3h2=0.159故にh2=0.053従ってh=0.23mm、W=0.69mm、ゲートランドLG3はゲート深さと同じ0.23mmとする。
1=5=60、2=4=30、3=4.5/2、SG=3h2=hとすれば2.3式から



1=5=60を代入するとhi,5=1.25、2=4=30を代入するとh24=0.887、まとめると
SG1とSG5は4.68mm2、SG2、SG4は2.42mm2、SG3は0.159mm2、W1とW5は3.75mmW2とW4は2.7mm、W3は0.69mm、
h1とh5は1.25mm、h2とh4は0.887mm、h3は0,23mm。

ゲートの寸法

表4.3をめやすとして参照下さい。
成形し成形品のでき栄えを見ながらゲートを太くして行くのが安全で確実な方法です。

表4.3.ゲートの寸法
製品肉厚 ゲート
円形 長方形
直径 mm ランドの長さmm 深さmm 幅mm ランドの長さmm
3
mm

ナイロン6 1.0~肉厚の
1/2
最大1.0 肉厚の1/2 肉厚に等(等)
(最小1.5)
最大1.0
ナイロン66 0.75~肉厚の
1/2
0.75~肉厚の
1/2
- - -
3

6
mm
ナイロン6 1.0~3.0 最大1.5 肉厚の1/2 肉厚の1/2~3/4 最大1.5
ナイロン66 0.75~3.0 0.75~3.0 - - -
6
mm

ナイロン6 3.0~4.5 最大ゲート径の
1/2
3.0~4.5 4.5 最大3.1
ナイロン66 3.0~4.5 3.0~4.5 - - -