低ソリ性

液晶ポリエステル樹脂は、他のエンジニアリングプラスチックスと比較すると①寸法安定性が良く、②良流動がゆえに低圧での成形が可能なため、成形品中の歪みが少なく、本来ソリやネジレが発生しにくい材料であります。
しかしながら近年要求されるレベルも高くなりつつあり、液晶ポリエステル樹脂であってもさらなる低ソリ性を実現させるため、それに見合ったグレード設計が必要です。ソリには次の2つのパターンがあります。

Ⅰ. 成形直後のソリ

  • 材料の異方性の小さいグレード
  • 良流動グレード
材料の異方性とソリ・ネジレ量を評価した結果を以下に示します。
項 目 充填材強化系 非強化系
L304G35 L304G35H L304M35 LCP
充填材 GF  
フィラー      
成形収縮率(%) MD方向 0.06 0.10 0.18 -0.15
TD方向 0.50 0.69 0.32 1.55
異方性 TD/MD 8.3 6.9 1.8 -10.3
ノート型パソコン用メモリソケット

成形品:ノート型パソコン用メモリソケット

ソリ・ネジレ量を評価

材料の異方性が大きいと、ソリは大きくなる傾向にあります。材料の異方性は、成形収縮率(流れ方向:MDと流れに直角方向:TD)において、MDとTDの差が大きいほど大きい傾向を示します。 液晶ポリエステル樹脂においては、ポリマー自体にすでに異方性が存在し、他のエンプラと最も異なる部分です。 したがって、液晶ポリエステル樹脂の異方性は非強化系(充填材なし)が最も大きく、ガラス繊維(GF)等の充填 材を添加することで、ポリマの配向を乱し、異方性を緩和します。さらに、充填材においても異方性の 小さいものの方が良好で、GF等の繊維状の充填材よりも、フィラーのような(粒状・板状)異方性の 小さいものの方が良好です。

Ⅱ. リフロー後のソリ

液晶ポリエステル樹脂が使用される用途として、IC回路基板上に実装されるSMTコネクターがあります。
コネクター実装時に高温の熱をかけてはんだを溶かす工程(リフロー工程)があり、この時にソリが発生する場合があります。
リフロー後のソリの発生原因は、成形品中の残留応力がリフロー時の熱で緩和することにより発生します。
シベラス™は他社LCPよりも良流動ですので、射出成形時のピーク圧力が低く、残留応力が小さくなり、リフロー時のソリも発生しにくい傾向にあります。

LCP射出成形時の圧力波形例

LCP射出成形時の圧力波形例