射出成形について

乾燥条件

  1. 一般的なアイテムに関しては、熱風乾燥機を使用し、温度:130~150°C,時間:3~5hrを基準に設定いたします。
  2. ただし、製品形状的にフクレ・計量不安定・ランダムショート等が発生しやすいアイテムの場合には、1. 以上に水分を除去する必要があり、除湿乾燥機(より好ましくはvacuum dryer) のご使用を推奨いたします。その際の乾燥条件は以下の通りです。
  • 乾燥温度:150°C
  • 乾燥時間:4~5時間
    (温度が低い場合には、どれだけ長時間乾燥させても水分除去は不充分となりますので、ご注意下さい。)

成形条件

Ⅰ. 成形温度

最適な樹脂温度は標準タイプは315~340°C、高耐熱タイプは325~350°Cの範囲です。高温において長時間滞留しますと、物性低下や焼け、分解などのトラブルが生ずることがありますので注意が必要です。
一方、シベラス™ は流動性が高い性質を持っていますため、先端ノズル部温度や形状によりましては、鼻タレが生じる場合があります。この場合、10~20°Cを目安に設定温度を下げて実施されることをお奨めします。“シベラス” の代表的な成形温度条件を下表に示します。

シベラス™ の推奨成形温度条件

(単位: °C)
タイプ ノズル※ C1(先端部) C2(中間部) C3(後部)
LX70シリーズ 300 ~340 330 ~350 310 ~350 270 ~350
L304シリーズ 300 ~340 330 ~350 310 ~350 270 ~350
L204シリーズ 300 ~320 320 ~340 300 ~330 270 ~330

*標準タイプの場合、小径ロングノズルの場合には、10~20°C高めに設定

Ⅱ. 金型温度

シベラス™ は一般に30~150°Cという広い温度範囲で成形することができます。しかしながら、製品の機械的強度やウェルド強度、さらには使用環境における寸法変化等を考慮しますと、90~130°Cの範囲が最適です。

Ⅲ. 射出圧力と射出速度

シベラス™ は一般的に溶融粘度が低いため、PBT樹脂やPPS樹脂などに比べ低い圧力で成形できます。低い圧力から実施され、徐々に圧力を上げて行うことが良い方法です。 成形品形状や金型構造にもよりますが、概ね20~90Pa程度の圧力で成形可能です。

シベラス™ は他の液晶ポリエステル樹脂と比較して流動性であることから、充填性の厳しい製品形状で あっても、「射出速度を低く」しての成形が可能であることが特長です。(射出速度を早くして成形しますと、ゲート部位でジェッティング現象によるエアの巻き込みが発生し、フクレ等の不具合が起こる可能性がありますので、ご注意下さい。)

スプルー・ランナー形状について

シベラス™ は流動性が極めて良好なため、従来のスプルー径であるとスプルー内でジェッティングを起 こし、エアの巻き込みを起こすため成形品に不具合が起きやすくなります。
従って、スプルー径を極力小さくする必要があります。

  1. 成形機ノズルには小径ロングノズルを使用し、ノズル径を小さく(φ1.0~2.0mm )、スプルー長を短くする。
  2. スプルー抜き勾配は小さく(1 ~2 ” [ 片側])する。
  3. スプルに段差があるとデッドスペースが発生し、フクレ不具合の要因となりますので、段差を無くす。

ランナーについても流動性が良いので細くすることができます。
スプルーランナーを細くすることで、樹脂使用量を減らすことができるとともに、射出時に成形品の キャビティへ樹脂が流入開始するまでの時間が短くなるので、樹脂の固化までの時間に余裕ができ、成形条件幅が広がります。

成形時に発生する諸不具合に対するアドバイス

シベラス™の射出成形においては、成形条件が適切でないと種々の不具合が生じることがあります。そこで、 種々の不具合に対する考えられる防止対策について下記の図に示します。

不具合現象 項目
金型温度 シリンダー温度 圧力 速度 保圧 サックバック スクリュー回転数
ハナタレ(垂延)   ノズル温度
低下
      増加
 
ふくれ   増加
  低下
増加
   
ソリ(成形直後) 低下
低下
低下
低下
増加
   
計量不安定   ホッパー部
増加
        増加
強度不足   増加
増加
増加
増加
   
離型不良 増加
  低下
低下
低下
   

*対策の一例であり、全ての場合に適合するとは限りません。