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化学的性質
化学的性質
Ⅰ. 耐薬品性
表11は、代表的な薬品中に東レPBT樹脂トレコン™非強化グレード1401X06を6ヶ月浸漬(室温)し、外観、 重最、寸法、引張強さの変化を調べた結果です。また表12に他のエンジニアリングプラスチックとの定性的な比較を示しました。
東レPBT樹脂トレコン™は広範囲な薬品に耐性を示します。無機薬品では濃硫酸、濃塩酸、強アルカリ以外には耐性を示します。また、有機薬品にも良好な耐性を示し、アルコール類、エーテル類、脂肪族炭化水索、高分子エステル類などにもおかされません。とくにガソリン、エンジンオイルなどにも良好な耐性を示すため白動車用途 に適しています。
ただし、アセトンやベンゼン、フェノールに対しては他のほとんどのエンジニアリング樹脂と同様に膨潤がみられますので、使用条件によっては注意が必要です。
また、東レPBT樹脂トレコン™を溶解するものには四塩化エタンとフェノールの混合溶媒やオルトクロロフェノールなどがあります。
薬品 | 重量変化率(%) | 寸法変化率(%) | 引張強さ保持率(%) | 外観変化 |
---|---|---|---|---|
純水 | +0.3 | 0 | 99 | 変化なし |
3%硫酸 | +0.3 | +0.1 | 97 | 〃 |
30%硫酸 | +0.2 | 0 | 99 | 〃 |
10%硝酸 | +0.3 | 0 | 99 | 〃 |
35%塩酸 | +0.5 | 0 | - | やや光沢消失 |
1%苛性ソーダ | +0.3 | +0.1 | 92 | 〃 |
10%苛性ソーダ | -0.1 | +0.1 | 91 | 〃 |
10%塩化ナトリウム溶液 | +0.3 | 0 | 95 | 変化なし |
40%無水クロム酸 | -0.2 | 0 | 100 | 〃 |
メタノール | +1.3 | +0.4 | 85 | 〃 |
エタノール | +0.3 | 0 | 97 | 〃 |
アセトン | +3.9 | +1.0 | 72 | 〃 |
メチルエチルケトン | +2.9 | +0.5 | 77 | 〃 |
酢酸エチル | +2.7 | +0.4 | 80 | 〃 |
ヘプタン | +0.1 | 0 | 100 | 〃 |
シクロヘサキン | 0 | 0 | 100 | 〃 |
氷酢酸 | +2.2 | +0.2 | 78 | 〃 |
ベンゼン | +3.0 | +0.5 | 70 | 〃 |
トルエン | +2.1 | +0.3 | 85 | 〃 |
5%フェノール | +9.6 | +1.7 | 60 | 黄変膨潤 |
四塩化炭素 | +0.6 | 0 | 100 | 変化なし |
二塩化エチレン | +16.8 | +4.7 | 50 | 膨潤 |
ジオクチルフタレート | -0.2 | 0 | 100 | 変化なし |
ジメチルホルムアミド | +2.7 | +0.3 | 80 | 〃 |
1%界面活性剤 | +0.2 | +0.1 | 99 | 〃 |
ガソリン | +0.2 | +0.1 | 99 | 〃 |
オリーブ油 | 0 | 0 | 100 | 〃 |
灯油 | 0 | 0 | 100 | 〃 |
重油 | 0 | 0 | 100 | 〃 |
機械油 | +0.1 | +0.1 | 100 | 〃 |
プラスチックの 種類 |
吸水率* | 弱 酸 |
強 酸 |
弱 ア ル カ リ |
強 ア ル カ リ |
活性ガス | 油 | ア セ ト ン |
ベ ン ゼ ン |
四 塩 化 炭 素 |
ア ル コ ー ル |
エ ス テ ル |
ガ ソ リ ン |
溶剤 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
PBT樹脂 | 0.08 | ◎ | △ | ○ | × | ○ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | オルトクロロ フエノール |
|
変性PPO | 0.07 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | △ | 四塩化炭素 | ||
ポリアセタール | (ホモ) | 0.25 | △ | × | △ | × | 塩素ガスには 浸される |
○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | 特殊 |
(コ) | 0.22 | ○ | ○ | ||||||||||||
ポリアミド | (6) | 1.32~1.90 | ○ | × | ○ | ○ | 塩素ガスには 浸される |
○ | ○ | ◎ | ○ | △ | ◎ | ◎ | フェノール、ギ酸、 メタクレゾール |
(66) | 1.5 | ||||||||||||||
ポリカーボネート | 0.15 | ◎ | △ | ○ | × | ○ | △ | × | × | × | △ | × | × | 塩化メチレン クロロホルム |
*ASTM D570(l/8"板厚24時間) ◎安全 ○ほぼ安全 △一部危験 ×危険(いずれも無荷重状態において)
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東レPBT樹脂“トレコン™”深化した高耐久車載ソリューションをご提案!撥水技術と耐加水分解技術により「耐アルカリ性」を飛躍的に向上
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Ⅱ. 耐ストレスクラック性
ダンベル試験片を図22のように変形させて放置し、表面にクラックが入るまでの日数を表13に示します。
東レPBT樹脂トレコン™非強化グレード1401X06はポリアセタール樹脂よりすぐれた耐ストレスクラック性を有しています。

図22 耐ストレスクラック性試験(試験片厚み3.2mm)
テスト条件 | クラック発生までの日数 | |
---|---|---|
1401X06 | ポリアセタール | |
空気中(145~150°C) | 14~16 | 2~3 |
エンジンオイル(85~90°C) | 28以上 | 6 |
Ⅲ. 耐熱水性
図23、24に東レPBT樹脂トレコン™非強化グレード1401X06およびガラス繊維強化グレード1101G-30の耐熱水性を示します。東レPBT樹脂トレコン™はポリカーボネート樹脂と同様、分子内にエステル結合をもっていますので、熱水中に長時間浸漬されますと加水分解をおこして重合度が低下し、その結果、強度が低下しますので、このような用途には注意が必要です。しかし、60°C程度の温水であれば長時間の使用にも耐えられます。
また、耐ヒートサイクル性の項で示したように、間けつ的にあるいは短時間熱水にさらされるような用途ならば十分使用可能です。
図23 1401X06の耐熱水性
図24 1101G-30の耐熱水性