衝撃特性

Ⅰ. シャルピー衝撃試験について

Fig.5.36 シングルノッチ試験片Fig.5.36 シングルノッチ試験片
Fig.5.37 シャルピー衝撃強さ比較(23℃)Fig.5.37 シャルピー衝撃強さ比較(23℃)

材料の靭性を示す衝撃特性は、振り子式ハンマーによる打撃前後の位置エネルギー差を利用して求めることができます。衝撃特性にはV字型の切り欠き加工(ノッチ)を施したノッチ付衝撃強さとノッチなし衝撃強さがあります。(Fig.5.36)  ノッチなし衝撃強さは、ハンマー打撃による衝撃エネルギーを試験片全体で受けるのに対して、ノッチ付き衝撃強さはノッチ部に衝撃エネルギーを集中させることにより破壊を促進しています。そのため、A504X90(PPS-GF40%)とA670T05(エラストマー改質非強化PPS)のように、ノッチ有無により関係が逆転することがあります。(Fig.5.37) 特に、エラストマーにより改質した高靭性グレードは、大変形により衝撃エネルギーを吸収して破壊に至らない場合があります。実際の製品設計では、形状などの要因によりノッチ効果(応力集中)が避けられない場合が多いため、ノッチ付衝撃強さがより重要視されます。

Table.5.3 トレリナ™の衝撃特性 (23℃)

項目 単位 ガラス繊維強化 ガラス+フィラー強化 エラストマー改質 非強化
A504X90 A604 A310MX04 A610MX03 A673M A575W20 A495MA2 A900 A670T05
シャルピー
衝撃強さ
ノッチ付 kJ/m2 11.0 12.0 8.0 7.0 15.0 7.3 7.5 4.0 5.8
ノッチなし 45 46 18 22 55 36 40 260 345
  • ※試験法:ISO179-1準拠

Ⅱ. 温度依存性

トレリナ™の代表的な9グレードのシャルピー衝撃強さの温度依存性をFig.5.38~5.45に示します。衝撃特性の温度依存性は、強化材の有無、エラストマー改質などにより温度依存性の傾向が異なります。一般強化グレード(A504X90等)は、温度依存性が小さく広い温度範囲で安定した衝撃強さを示します。一方、エラストマー改質グレードは、強化材の含有率の違いにより衝撃特性の温度依存性が異なるものの、エラストマーの改質効果により高い衝撃性を示します。特に、強化材の含有率が低い材料ほどエラストマーによる衝撃強さ(靭性)の向上効果が高い傾向にあります。

【一般強化グレード】

1 A504X90(標準)、A604

  • Fig.5.38 ノッチ付衝撃強さの温度依存性Fig.5.38 ノッチ付衝撃強さの温度依存性
  • Fig.5.39 ノッチなし衝撃強さの温度依存性Fig.5.39 ノッチなし衝撃強さの温度依存性

2 A310MX04(標準)、A610MX03

  • Fig.5.40 ノッチ付衝撃強さの温度依存性Fig.5.40 ノッチ付衝撃強さの温度依存性
  • Fig.5.41 ノッチなし衝撃強さの温度依存性Fig.5.41 ノッチなし衝撃強さの温度依存性

【エラストマー改質グレード】

3 A673M、A575W20、A495MA2

  • Fig.5.42 ノッチ付衝撃強さの温度依存性Fig.5.42 ノッチ付衝撃強さの温度依存性
  • Fig.5.43 ノッチなし衝撃強さの温度依存性Fig.5.43 ノッチなし衝撃強さの温度依存性

【非強化グレード】

3 A900、A670T05

  • Fig.5.44 ノッチ付衝撃強さの温度依存性Fig.5.44 ノッチ付衝撃強さの温度依存性
  • Fig.5.45 ノッチなし衝撃強さの温度依存性Fig.5.45 ノッチなし衝撃強さの温度依存性