表面特性

Ⅰ. 表面硬度について

表面硬度は、押込み硬度(ビッカース硬度、ブリネル硬度、デュロメータ硬度等)、引掻き硬度(モース硬度、マルテンス硬度等)および反発硬度(ショア硬度等)の3つに大別され対象物に応じて使い分けられています。プラスチックの表面硬度測定は、短時間で簡便に測定できるロックウェル硬度(押込み硬度)がよく用いられています。

Ⅱ. ロックウェル硬度

ロックウェル硬度に使用する圧子は、ダイヤモンド円錐状と鋼球状の2種類があり加える荷重や曲率により分類されています。トレリナ™のロックウェル硬度は、圧子先端が鋼球のMスケール(1/4in鋼球、径6.35mm)とRスケール(1/2in鋼球、径12.7mm)を用いています。ロックウェル硬度の測定は、成形品表面に圧子を接触させた状態で、①基準荷重負荷(基準深さ)、②15秒間試験荷重負荷、③試験荷重除荷後15秒後くぼみ深さ測定の順序に従い永久ひずみ(h)を測定します。(Fig.5.83) 粘弾性体であるプラスチックは、試験荷重を負荷した状態では圧縮クリープ現象が起こり時間とともにくぼみ深さが変化するためにJIS規格などでは負荷時間が規定されています。得られたくぼみ深さと式5.3によりロックウェル硬度を求めることができ、永久ひずみ(h)がゼロの場合にロックウェル硬度130となり最大となります。

Fig.5.83 ロックウェル硬度測定方法(接触部)
Fig.5.83 ロックウェル硬度測定方法(接触部)

トレリナ™のロックウェル硬度をTable.5.11に示します。強化系PPSのロックウェル硬度は、強化材の含有率やエラストマー改質有無に依存しています。非強化PPSは、Rスケールは強化系PPSと同等の表面硬度を示すのに対して、Mスケールでは低い表面硬度を示します。非強化PPSは5.1.2項に記述した通り、弾性領域が強化系PPSよりも広いことから、低荷重の押込みでは塑性領域にまで変形量が達していないため、除荷後に弾性回復することにより見掛け上表面硬度が高くなっていると考えられます。
このように粘弾性体であるプラスチックの表面硬度は、圧子の形状や荷重により傾向が異なることから目的に応じて適切な測定方法や条件を選択することが重要です。

Table.5.11 トレリナ™のロックウェル硬度 (23℃)

項目 ガラス繊維強化 ガラス+フィラー強化 エラストマー改質 非強化
A504X90 A604 A310MX04 A610MX03 A673M A575W20 A495MA2 A900 A670T05
ロックウェル
硬度
Rスケール 122 122 123 123 114 117 115 122 116
Mスケール 98 98 100 100 85 88 85 84 68