絶縁特性

Ⅰ. 体積固有抵抗

体積固有抵抗はPPSの絶縁性を示す電気抵抗率の一種であり、Fig.7.1に示す平板状の成形品を円形の電極で挟み一定電圧(500V)を1分間負荷した後の電流値よりオームの法則に従い求めることができます。トレリナ™は極めて吸水性が低く、高湿度環境下においても高い絶縁性を維持します。(Fig7.2~7.3)

Fig.7.1 体積固有抵抗測定方法(二重リング電極法)

Fig.7.1 体積固有抵抗測定方法(二重リング電極法)

Table.7.1 トレリナ™の体積固有抵抗

項目 単位 ガラス繊維強化 GF+フィラー強化 エラストマー改質
A504X90 A310MX04 A673M A575W20 A495MA2
体積固有抵抗 Ω・m 2×1014 1×1014 1×1015 2×1014 1×1014
  • Fig.7.2 吸水率(40℃×95%RH、3mmt)Fig.7.2 吸水率(40℃×95%RH、3mmt)
  • Fig.7.3 吸水率と体積固有抵抗の関係Fig.7.3 吸水率と体積固有抵抗の関係

Fig.7.4 体積固有抵抗の温度依存性Fig.7.4 体積固有抵抗の温度依存性

トレリナ™の体積固有抵抗は、温度に依存して低下傾向を示しますが、ガラス転移温度以上の高温環境においても1010(Ω・m)以上の高い絶縁性を維持します。(Fig.7.4)

Ⅱ. 絶縁破壊強さ

Fig.7.5 絶縁破壊試験Fig.7.5 絶縁破壊試験

絶縁破壊強さは、試験片が絶縁破壊を起す電圧を電極間距離(試験片の厚み)で除した単位厚みあたりの耐電圧性として表されます。(Fig.7.5) トレリナ™の絶縁破壊強さは、10~20秒で絶縁破壊に至るように昇圧する短時間破壊試験法(短時間法)で示していますが、他にも一定電圧で20秒間ずつ段階的に昇圧していく段階破壊試験法などがあります。(Table.7.2)
トレリナ™の絶縁破壊強さは、強化材の種類や含有率により異なります。特に強化材の含有率が低い材料ほど絶縁破壊強さに優れる傾向があります。また、環境温度の変化に対しても絶縁破壊強さの変化は小さく、高温環境においても高い絶縁耐力を維持します。(Fig.7.6)
一方、成形品の厚み依存性が認められ成形品が薄いほど見かけの絶縁耐力が高い傾向を示します。(Fig.7.7)

Table.7.2 トレリナ™の絶縁破壊強さ (短時間法、23℃)

項目 厚み 単位 ガラス繊維強化 GF+フィラー強化 エラストマー改質 非強化
A504X90 A310MX04 A673M A575W20 A495MA2 A900
絶縁破壊強さ 1mmt MV/m 24 19 26 25 21 30
3mmt 14 12 15 14 12 16
  • Fig.7.6 絶縁破壊強さの温度依存性(3mmt)Fig.7.6 絶縁破壊強さの温度依存性(3mmt)
  • Fig.7.7 絶縁破壊強さの厚み依存性(23℃)Fig.7.7 絶縁破壊強さの厚み依存性(23℃)