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誘電特性
絶縁体であるトレリナ™に電圧を印加すると、電気は通さないものの分極と呼ばれる電子の偏りが起こります。誘電率はこの分極の度合いを示す特性であり、誘電率が低い材料ほど絶縁体中に蓄えられる静電エネルギー量が小さく絶縁性に優れています。また、単に誘電率という場合は、絶縁体の誘電率と真空の誘電率の比である比誘電率のことをさすことが多いですが、真空の誘電率を1としているため誘電率と比誘電率は等価として実用的に問題はありません。
一方、絶縁体に交流電圧を印加すると分極の影響により電気エネルギーの一部が熱エネルギーとして損失される誘電損(または誘電損失)が起こります。誘電正接(tanδ)は、この誘電損の度合いを示す特性であり、誘電正接が大きい材料ほど誘電損は大きくなります。高周波を扱う電気・電子部品(コンデンサーなど)では特に重要な特性であり、誘電損による成形品の温度上昇は絶縁性の低下や内蔵している電子回路の不具合などを引き起こす原因となります。
トレリナ™の誘電特性をTable.7.3に示します。
項目 | 単位 | ガラス繊維強化 | GF+フィラー強化 | エラストマー改質 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
A504X90 | A310MX04 | A673M | A575W20 | A495MA2 | ||
比誘電率 | - | 4.3 | 5.4 | 3.9 | 4.4 | 4.6 |
誘電正接 | - | 0.003 | 0.004 | 0.001 | 0.002 | 0.005 |
Ⅰ. 周波数依存性
トレリナ™は、広い周波数帯域で安定した誘電特性を示しており、A673Mなどの強化材の含有率が低い材料ほど誘電特性に優れています。(Fig.7.8~7.9)
Fig.7.8 比誘電率の周波数依存性
Fig.7.9 誘電正接の周波数依存性
Ⅱ. 温度依存性
トレリナ™の誘電率は、広い温度範囲で安定しています。一方、誘電正接については、ガラス転移温度を境にして大きくなる傾向を示していることから、非結晶部の分子運動性が誘電損にも影響していると考えられます。(Fig.7.10~7.13)
Fig.7.10 比誘電率の温度依存性 (1kHz)
Fig.7.11 比誘電率の温度依存性 (1MHz)
Fig.7.12 誘電正接の温度依存性 (1kHz)
Fig.7.13 誘電正接の温度依存性(1MHz)